コロナ禍により、脚光を浴び始めた地方の田舎暮らし。自然の中で五感を感じながら、悠々自適にゲストハウスを営むご夫婦の様子をテレビ番組で見ると、憧れますよね・・・
特に、古民家のゲストハウスは、田舎暮らし・古民家暮らしを体験したいインバウンドにも人気が高く、高評価を得やすく、収入としても安定します。また、ゲストハウスを活用して、他のビジネスを始めることもできます。将来的に地方の古民家に暮らしたいという方の参考になれば幸いです!
こんにちは!古民家暮らしナビゲーターのイサタケです。当ブログにお越し頂き、ありがとうございます!はじめてお越しの方は、はじめての方へをお読み下さい。
ゲストハウスを始めるために一番必要な申請は、旅館業の認可です。これがないと、営業はできません。必ず事前に居住地の都道府県の許可を受けなければなりません。無許可営業を行った場合、罰則として6ヶ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその併科が処されることになります。(旅館業法第10条第1号)
また、始めたい規模や営業日数により、申請する旅館業の形態が違いますので、こちらでご紹介しますね。
見出しこちらです。
古民家ゲストハウスを始めるための3つの旅館業形態その1.簡易宿泊所
簡易宿泊所とは、「宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のもの」(旅館業法2条4項)を行う施設です。
ホテルや旅館には該当しない簡易な施設で、具体的には、民宿、ペンション、山小屋、ユースホステル、カプセルホテルなどのことを言います。
一般的に個人が簡易宿泊所申請するには、ハードルが高いとされています。簡易宿泊所は【専ら営業する】ことを目的としているためです。保健所、消防署、都道府県建築関連課での事前相談や申請が必要となります。
素人には作成の難易度が高い施設の間取り図や側面図、施設概要書、給排水設備図、換気設備図等が必要になり、提出書類も多く、揃えるのも大変です。
私も、簡易宿泊所申請をしましたが、途中で何度も心が折れそうでした。夫が建築士なので、図面は作成してもらい、何とか申請できましたが、これを自分で作成するとなると、申請には至らなかったかもしれません。
申請書類作成が苦手な方は、行政書士に書類作成代行してもらうことをおすすめします。お金はかかりますが、素人が作成するにはかなり負担が重い申請です。
古民家ゲストハウスを始めるための3つの旅館業形態その2.民泊
コロナ感染拡大した令和2年以前では、インバウンドの増加により民泊ブームとなり、違法民泊で周辺住民とのトラブルが後を絶ちませんでした。そのため、2018年6月から、違法営業する者を一掃するための【民泊新法】が施行されました。
民泊新法とは、従来の旅館業法で定める4つの営業形態(ホテル、旅館、簡易宿所、下宿)及び国家戦略特別区域の特区民泊に該当しない新しい営業形態である「住宅宿泊事業」を規定する法律です。
一定の基準を満たす住宅であれば、届出だけ(認可不要)で民泊営業を始められ、簡単な手続で空き家や個人の住宅の空き室を活用して宿泊所営業が可能になります。
ただし、1年間で180日を超えない範囲内でしか営業できないため、民泊新法で営業を始める件数は全国的に国土交通省が想定していたより少なく、違法民泊が減ったのはよかったけれど、結果的に全体的な民泊数は減ってしまったのが残念です。
その4で一覧表にしていますが、民泊新法での住宅宿泊事業件数が少なくなった原因は、届出とはいえ、必要書類の煩雑さだと思います。これだけの書類の多さでは、申請に躊躇する人も多く、申請数が少ないのも分かります。
古民家ゲストハウスを始めるための3つの旅館業形態その3.農林漁家民宿
日本でコアな体験を楽しみたいインバウンドなど旅行客を地方に呼び込むため、日本の伝統的な生活体験と農村地域での宿泊施設の確保が、農林水産省により推進されました。
地元食材を使った飲食や農業・漁業体験など観光コンテンツはたくさんあるのに、宿泊所がほとんどない地方では農林漁家民宿を増加させることが課題だったためです。
また、農林漁家世帯が空き部屋や空き家を活用して、繁忙期以外に少しでも収入が得られることも目的としているため、適用除外なども多いです。特に、私が住んでいる愛媛県では、一次産業世帯の収益にプラスになることを目的としているため、他の旅館業よりも申請の基準が緩くてハードルが低いです。
他の県でも、独自の認可基準があるかと思いますので、気になる方はお住まいの都道府県のホームページを調べてみてはいかがでしょうか。
農林漁家民宿は、自宅の空き室にインバウンドなど旅行客に宿泊・料理を提供し、トイレ・浴室などは家族との共有という形なので、低価格の宿泊+体験つきのホームステイのようなものです。
空き家や空き部屋はあるけれど、農地・山・漁場は所有してないから、旅館業はできないと心配される方もおられると思います。農林漁業者でなくても、体験コンテンツを提供できる農林漁業者とコラボしても、農林漁家民宿の申請はできます。
ご心配な場合は、最寄りの都道府県出張所、農林関連課にお問い合わせ下さい。
古民家ゲストハウスを始めるための3つの旅館業形態その4.比較一覧表
田舎で旅館業を始めるために3つの選択肢があることをお伝えしました。それぞれの特徴を比較一覧表にまとめました。
簡易宿泊所 | 民泊新法 | 農林漁家民宿(愛媛型) | |
---|---|---|---|
許認可など | 許可 | 認定 | 認定 |
申請先 | ・都道府県管轄の保健所 ・都道府県管轄の建築関連課 ・消防署 | ・都道府県管轄の保健所 ・都道府県管轄の建築関連課 ・消防署 | ・都道府県管轄の農林水産関連課 ・都道府県管轄の建築関連課 ・消防署 |
日数制限 | なし | 年間180日以内 | なし |
規模 | 宿泊者1人当たり3.3 ㎡以上の確保 | 宿泊者1人当たり3.3 ㎡以上の確保 | 宿泊者1人当たり3.3 ㎡未満 |
体験コンテンツ | なし | なし | 必要 |
定員 | 10人まで | 10人まで | 10人まで |
必要書類 | ①旅館業営業許可申請書 ②営業者申告書 ③構造設備の概要 ④申請地を中心とした半径300メートル以内の見取図 ⑤建物の配置図、正面図及び側面図 ⑥営業施設の各階平面図 ⑦照明配置図、空調設備図、給排水設備図等の設備図面 ⑧客室にガス設備を設ける場合にあっては、その配管図 ⑨定款または寄付行為の写し及び登記事項証明書(法人の場合) ⑩申請手数料(2万円~3万円) ⑪食品衛生法営業許可申請 ⑫水質汚濁防止法特定施設設置法届出書 ⑫消防法令適合通知書交付申請書 ⑬建築基準法に関する事前相談 | ①住宅宿泊事業届出書 ②破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書 ③欠格事由に該当しないことを誓約する書面 ④住宅の登記事項証明書 ⑤住宅が「入居者の募集が行われている家屋」に該当する場合は、入居者募集の広告その他それを証する書類 ⑥「随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋」に該当する場合は、それを証する書類 ⑦住宅の図面(各設備の位置、間取り及び入口、階、居室・宿泊室・宿泊者の使用に供する部分の床面積) ⑧賃借人、転借人の場合、賃貸人が承諾したことを証する書類 ⑨転借人の場合、賃貸人及び転貸人が承諾したことを証する書類 ⑩区分所有の建物の場合、規約の写し ⑪規約に住宅宿泊事業を営むことについて定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がないことを証する書類 ⑫委託する場合は、管理業者から交付された書面の写し ⑬水質汚濁防止法特定施設設置法届出書 ⑭消防法令適合通知書交付申請書 ⑮建築基準法に関する事前相談 | ①農林漁家民宿認定申請書 ②旅館業営業許可申請書(一部基準緩和) ③食品衛生法営業申請(一部基準緩和) ④水質汚濁防止法特定施設設置法届出書 ⑤消防法令適合通知書交付申請書(一部基準緩和) ⑬建築基準法に関する事前相談(一部基準緩和) |
宿泊者名簿 | 要設置 | 要設置 | 要設置 |
営業の目的 | 収益 | 収益 文化交流 空き室活用 | 収益 文化交流 空き室活用 |
いかがだったでしょうか?
簡易宿泊所や民泊新法は知られていますが、農林漁家民宿という制度を知っている人は少ないのではないでしょうか。
うちの宿も、保健所での簡易宿泊所の申請では、合併浄化槽の問題で基準が厳しく、飲食の提供が許可されないため、旅館業として運営ができない状態でした。
農林漁家民宿という制度のおかげで、基準が緩和され、古民家の宿を運営できるようになりました。最初から、農林漁家民宿で申請してればよかったのに・・・と悔やまれますが、色々勉強になりました。
次回はその合併浄化槽問題についてご紹介しますので、引き続き読んで頂ければ幸いです。最後までお読み頂きありがとうございました。
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