【古民家建築】なぜ日本家屋の屋根の軒は深いの?重要な役割4つのメリットを紹介

古民家暮らし


日本家屋、特に古民家の屋根は、一般的にハウスメーカーの現代住宅よりも軒が深いです。私が住んでいる地域は山間部なので、梅雨には雨がよく振り、冬には雪も雨も多い地方です。



そんな雨や雪が多い地域では、屋根が張り出して軒が深い日本家屋の造りは、風土に合っているように思います。伝統的な日本家屋は、なぜこのように、軒が深いデザインなのでしょうか?



こんにちは!古民家暮らしナビゲーターのイサタケです。当ブログにお越し頂き、ありがとうございます!はじめてお越しの方は、はじめての方へをお読み下さい。



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古民家建築:屋根の軒の重要な役割4つメリットを紹介


最近では、新築の建物を見ると、洋風の外観の家が増えて、間口の小さな窓を採用しているのが目立ちます。確かに、軒は浅くスタイリッシュなデザインになり、外観はカッコよく見えます。中には庇(ひさし)がまったくない家もあります。



しかしながら、家の作りようは、夏をむねとすべしという考え方が、昔から日本にはあります。高温多湿の風土から考えると、従来の日本家屋のように、軒が深く、開口部が大きく、通気のいい家と、輸入住宅のように必要最低限の開口部しかない住宅とは、家のつくりやコンセプトが大きく異なります。



軒や庇が果たす重要な役割としては、少なくとも4つの大きなメリットがあります。


夏の日差しを防ぐこと


ここのところ温暖化の影響で、毎年記録的な暑さが続いていますが、軒の深さは暑さ対策にも効果絶大です。夏は太陽の位置が高いので、軒や庇によって、厳しい日差しを遮ることができます。



エアコンを付けていても、冷房の効きも悪くなるので、南面の窓は明るくて開放的ですが、真夏の日中の日差しはできれば避けたいです。1日中エアコンが必要になると、電気代や健康面でも影響が出てきそうですね。

冬の暖かい日差しを取り込むこと


寒い冬は、太陽が低い位置を通るため、軒や庇があっても、日差しは室内まで届き、暖かな日射を取り込むことができます。



日本家屋には、縁側という外でもない中でもない曖昧な空間があるため、外に出なくても、縁側で布団を干したり、作業をしたり、ご近所さんとお茶をしたり、子供達が遊んだりできます。日本家屋は、軒が深いことで形成できる空間が、日常生活に彩を添えてくれます。

雨の日でも洗濯物を干すことができる


軒が深いと縁側という空間ができることで、軒の下に洗濯物を干すことができるようになります。日本は雨が多いので、日中働いている人は外に洗濯物を干したままでの外出はちょっと心配ですよね。



軒下に洗濯物を干すことで、雨が降っても濡れずに干しておけるということは、主婦にとって、精神的な大きなメリットです。



現在は、乾燥機付きの洗濯機や浴室乾燥で乾かしている家も多いですが、エコで節約志向の主婦には、軒下は有難い存在です。

外壁を雨水や湿気から守ること


雨量の多い日本では、壁に直接雨水が当たらないように、軒や庇で雨水を遮ってきました。軒が浅くて、雨水がよく当たる壁は、数年で藻が発生し、緑色の壁になってしまっている家をよく見かけます。壁を傷ませないためにも、雨水を遮る対策が必要です。



また、軒天がないと、外壁の中の湿気が外に排出できません。特に、現在は、24時間換気が義務付けられています。外壁内に断熱材を入れるため、断熱材と外壁の間には通気する空間を設けないと、壁の中で結露になってしまう可能性があります。



デザイン性や予算の関係で風土に合わない外装にしてしまうと、機能性や健康面にも影響が出て、建物も劣化して長持ちできない可能性がありますので、注意が必要です。


古民家建築:屋根の軒のデザインや機能性とは?



我が家を事例として、軒についてご紹介します。間取り図にある長屋門をご紹介します。
   

madorizu
我が家の間取り図 黄色のところが長屋門


出展:犬伏武彦著【民家ロマンチック街道―伊予路】

長屋門の軒下


長屋門の軒を見ると、外壁芯より軒先瓦(のきさきがわら)まで、118cmあります。これだけ軒が深いと少々の雨は外壁にかかることはありません。しかし、これだけ軒が深いうえ瓦が葺かれているのに、それを支えている垂木(たるき)が小さいと思いませんか。



実は、この軒は二重構造になっているのですが、お分かりになりますか?

長屋門の軒


正面から見ると、屋根の勾配と軒の勾配の違いがよくわかります。軒を深くすると軒先にかかる荷重が増えるため、屋根を支える垂木も大きくなってしまいます。



しかし、こちらの軒は二重にすることにより野垂木(のだるき)や補強材を隠すことができ、軒先の垂れを防ぐ効果もあります。また、屋根勾配よりも緩い勾配とすることで、美観的にも落ち着いた雰囲気となっており、匠の知恵と技術に感心するばかりです。



母屋は、厚い茅葺がトタンの下にあり、それを支えているのが、軒の垂木です。かなり深くて、230cmあります。激しい雨でも、家の中に吹き込むことはありませんが、さすがに風が強い時は雨戸を閉めます。

母屋は茅の厚みがあるので、軒下230cmあります


古民家や日本家屋の深い軒は、デザイン的にも機能的にも優れているということが分かりました。また、土地の風土にあった建築様式にすることが、家を丈夫に長持ちさせるコツです。



このように、軒が深いことには、家を長く保つ役割があります。また、住んでいる人にも優しい造りになっています。軒下が深いと費用がかかるという理由やデザイン性から、軒がない家が増えましたが、古民家など日本建築に学ぶところはたくさんあります。



古民家で何かお困りの際はこちらにご相談は下さい。最後までお読み頂きありがとうございました。
  

建築ワード説明


●家の作りようは、夏をむねとすべし
吉田兼好著『徒然草』第55段にある家の作り方に関する言葉。
●軒先瓦(のきさきがわら)
軒先を葺く瓦のことで、水切りがよいように垂れが付いている。
●垂木(たるき)
垂木とは母屋に固定された屋根の骨組みで、野地板を固定する役割のこと。
●野垂木(のだるき)
化粧垂木(けしょうだるき)の上にあって、屋根を支えている垂木で、下からは見え
ない。

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