【古民家】屋根に乗ってる鬼瓦はどういう役割があるのか?守り神?ただの飾り?古民家暮らしナビゲーターが解説!

我が家西の蔵の屋根にある鬼瓦 建築的なこと


古民家の屋根の上によく見かける鬼の顔をした瓦、あれはどういう役割があるのでしょうか?普通の瓦にしたら費用もかからないのに、なぜわざわざ技巧を凝らした瓦にするのでしょうか、何か意味があるのか気になりますよね。



こんにちは!古民家暮らしナビゲーターのイサタケです。当ブログにお越し頂き、ありがとうございます!はじめてお越しの方は、はじめての方へをお読み下さい。


見出しこちらです。

古民家の屋根の装飾:鬼瓦の役割


鬼瓦とは、屋根のもっとも高いところの端につける鬼の顔をかたどった瓦のことですが、鬼の顔がなくても鬼瓦と言います。ちょっとびっくりですよね?



もともとは、雨仕舞い(あめじまい)の役割を兼ねた装飾瓦なので、種類は多く、鬼の形だけでなく、シンプルな形のものから、蓮の花や福の神がついたものなどがあります。



雨仕舞いとは、家を建築する際、作業途中の開口部に浸水防止の処置を施すこと です。分かりやすく言うと、雨は家が劣化する最大の要因になるので、屋内に浸水しないよう突合せ部分も耐水性のある材料(瓦)で覆うことをいいます。

古民家の屋根の装飾:鬼瓦を施している我が家の事例


我が家で鬼瓦が施されている場所は、2つある蔵のうちの、西の蔵です。いかつい顔をしていますが、よく見るとけっこうユニークな顔つきです。じっと見ていると、優しい心の持ち主かなとも思ってしまいます。

我が家の配置図

犬伏武彦著【民家ロマンチック街道―伊予路】引用



上の配置図を見ますと、我が家には東と西に2つの蔵があります。敷地内にバランスよく配置されている蔵は、現代でいう納戸のような役割があります。



日本家屋は、開口部(かいこうぶ)が多く、建具(たてぐ)で仕切られて壁が少ないため、部屋には家具は少量にとどめ、細々している物品は蔵に保管して、季節ごとに取り出していたようです。今でいうウォーキングクローゼットが外部にあるというイメージでしょうか。



我が家の蔵には、東の蔵に米や陶器類、西の蔵に衣類や布団類や季節の物品:簾(すだれ)衝立(ついたて)などが保管されていました。



蔵の中にはお宝のような物は一つもありませんが、我が家のような長期間耐久している古民家が存在していることが希少性が高く、地域の財産だと思っています。


古民家の屋根の装飾:鬼瓦の意味


西の蔵の鬼瓦(西面)



西の蔵の上に乗っている鬼瓦は、画像を撮影してよく見ると、東面と西面では鬼の表情が違います。最初の東面の鬼は、比較的普通の表情でしたが、こちらの画像西面の鬼は口を大きく開けて相手を威嚇する様な怖い顔です。



日本古来の陰陽道(おんみょうどう)の思想から、違いがきているのでしょうか。鬼瓦が造られる様になったのは奈良時代以降と言われています。



邪を払う意味を込めた中国古代の文様が変化して、鬼瓦になったようです。鬼の頭の上に見える巴紋(ともえもん)の部分は鳥衾(とりぶすま)といいます。巴紋は水を意味する文様なので、火除け(ひよけ)の意味が込められています。



この部分は、日本全国地域によっても呼び方が異なり、カラス止まり、カラス休みなどとも呼ばれるそうです。

愛媛県武道館展示 菊間町で作られた巨大鬼瓦

  http://tadaoh.net/design/architecture/ehime_budokan.htmlより画像引用



愛媛県武道館の玄関正面の中庭には、愛媛県の菊間町(きくまちょう)で造られた巨大な鬼瓦が展示されてあります。洋風建築が増えてきた最近は、見ることも少なくなってきた鬼瓦ですが、鬼師(おにし)の技を残す上でも、伝統の継承を願っていきたいものです。



我が家の屋根を修理した時に、残念ながら傷みが激しい鬼瓦を最近のものと交換し、空いた場所に放置することになりました。こういった装飾瓦一つとっても、日本建築は本当に奥深い芸術性を感じます。



鬼瓦は、雨や雪の水や湿りを防ぐ雨じまいの役割で施されている瓦ですが、同時に火事から家を守る火除けの願いも込められている装飾瓦でした。



今年、私達が住んでいる地域に雪が何度か降りました。南国と思われている愛媛県ですが、実は、下関の方からの冷たい大気が四国山脈にぶち当たり、雪が降る時がひと冬に何度かあります。雪が降ると、屋根に積もった雪が、溶け落ちる時に樋(とい)が傷みやすくなります。



屋根瓦の劣化により雨漏りにつながり、家の耐久性に支障が出ることもあります。雨漏りすると、木材の腐食からシロアリの発生につながり、ひいては家全体の耐久性も失ってしまうので、見過ごせない事例です。



たかが雨漏りと考えていると、家の耐久性や資産価値など大きな損失につながります。ご心配な場合は、古民家建築専門の設計事務所にお早めにご相談下さい。今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。


建築ワード説明


●雨仕舞い(あめじまい):建築物内部に雨水が浸入しないような仕組みを施す総称。
●開口部(かいこうぶ):建築物で屋根、壁、床、天井の一部が開放された部分をいう。採光、通風、換気、人や物の出入りなどの目的で設ける。
●建具(たてぐ):戸、障子、襖、窓など、開閉して空間を仕切るものの総称。
●簾(すだれ):竹やよしなどを編んで、部屋の仕切りあるいは日よけのために吊り下げて用いるもの。
●衝立(ついたて):日本の家屋(伝統的建築)で用いられる、目隠しや間仕切り家具のこと。
●陰陽道(おんみょうどう):古代中国の陰陽(いんよう)五行(ごぎょう)説にもとづいて、自然現象を説明し人間の吉凶を判断する学問のこと。
●巴紋(ともえもん):コンマあるいは勾玉のような形をした日本の伝統的な文様の一つで、巴を使った紋の総称。
●鳥衾(とりぶすま):鬼瓦の上に、反って長く突き出した円筒状の瓦のこと。
●愛媛県武道館:愛媛県松山市の松山中央公園内にある武道館。財団法人愛媛県スポーツ振興事業団が運営している。愛媛県産の木材、菊間瓦、大島石、砥部焼などを利用して建設され、日本武道館や東京武道館と並ぶ日本最大級規模の施設。
●菊間町(きくまちょう):菊間町は、かつて愛媛県の東予地方にあった町。2005年1月、今治市と菊間町を含む越智郡12町村での新設合併により、新しく今治市の一部となった。古くから菊間瓦の生産で有名。
●鬼師(おにし):鬼瓦を手作業で作る職人のこと。

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